FM OTSU COLUMN
なぜ、ラジオは”心に効く”のか
数字では測れない、もうひとつの広告の力について。FMおおつ代表・古田 誠がBNIのメインプレゼンテーション(2026年8月6日)で語った「毎週話せる」「永続する」「番組を持つ専門家」という3つの価値。あれは主に数字の話でした。費用対効果、継続性、資産性——どれも正しい。でも、その裏側にはもっと根源的な理由があります。ここでは、さらに本当に伝えたかったことを深掘りします。人は、なぜ「声」を信じるのか。その答えを集めてみました。
1. 想像力という、世界最大のスクリーン
テレビも、SNS動画も、すべてを見せてくれます。見せてくれるがゆえに、見た人の想像力はそこで止まる。 ラジオは、違います。音だけが届き、映像は届かない。だからこそ聴き手の脳は、声のトーン、間、息づかいから、自分だけの情景を勝手に描き始めます。マーケティングの世界ではこれを「シアター・オブ・ザ・マインド(心の中の劇場)」と呼びます。広告主が用意した映像より、聴き手自身が想像した情景の方が、ずっと心に残る——これは比喩ではなく、脳科学が裏付け始めている事実です。 fNIRS(近赤外分光法)を使った実証実験では、音声広告を聴いているとき、脳の「自分ごと化」に関わる領域(vmPFC)の活動が、映像広告を見ているときより大きく反応することが確認されています。しかもリラックスしながら高い覚醒状態にある、という状態。記憶・感情関与・注目の3指標を合わせた「総合効果」でも、音声広告は動画広告を有意に上回りました。 つまり、ラジオは聴き手の脳に「余白」を残す媒体です。その余白を、リスナー自身の記憶と感情で埋めてもらえる。これは、情報を”詰め込む”広告には決して真似できません。2. 声は、顔の見えない信頼を運ぶ
折込チラシは、読まれる前にゴミ箱へ。SNS広告は、指がスクロールした瞬間に消える。展示会は、その日限りの一期一会。 ではなぜラジオだけが「残る」のか。理由のひとつは、声には「人格」が宿るからです。毎週同じ時間に、同じ声が語りかけてくる。リスナーはその声のトーン、間の取り方、笑い方まで覚えていきます。これは会ったことのない相手に対して、まるで友人のような感覚——研究の世界では「パラソーシャル(疑似社会的)関係」と呼ばれる現象です。 海外の音声広告研究(Radiocentre / System1「Listen Up」調査)でも、ラジオは他のどのメディアよりもブランドへの信頼を築く力が強いと報告されています。ライブ放送の熱量、お気に入りのパーソナリティの親密さ——それが聴き手と広告主のあいだに「共有された体験」を生み、気分と自信を押し上げ、購買行動につながる。数字がすぐに動かなくても、信頼という土台がじわじわと積み上がっていく。古田がプレゼンで話していた「あの先生のラジオですか!?」という初対面の一言に宿る価値そのものです。名刺交換時の単なるアイスブレイク以上の効果がラジオにはあるのです。3. ひとりの時間に、そっと寄り添う
通勤中の車の中、キッチンで洗い物をしながら、深夜に一人で仕事をしているとき——ラジオは、誰かと一緒にいる感覚を与えてくれる数少ないメディアです。 海外の調査では、「コンパニオンシップ(伴走型・道連れ)」がラジオを聴く最大の理由のひとつだと繰り返し指摘されています。家族や友人が近くにいなくても、ラジオから聞こえる声が孤独感を和らげる——高齢者や、一人暮らしの人、リモートで働く人にとって、パーソナリティの声は「もうひとりの話し相手」になり得るのです。 これはFMおおつが背負っている役割そのものでもあります。日曜24時(月曜深夜0時)、古田 誠の「まあ、こんなところで」を聴いている誰かは、きっとその時間、一人です。その一人に寄り添えるのが、ラジオという媒体の静かな強さです。4. コミュニティFMだけが持つ、もうひとつの使命
そして、これはFMおおつのようなコミュニティFMにしかできないことです。 地震や豪雨のとき、防災無線が聞き取れなくても、ラジオは各家庭・各車内に直接届きます。総務省や日本コミュニティFMが防災情報インフラとして自治体と連携し、地域の安心安全を支える存在として位置づけられています。「防災セットにラジオ」は、伊達や酔狂ではなく、命に関わる本物の備えなのです。 平時には、地域の文化や人をつなぎ、まちの合言葉をつくる。有事には、命をつなぐ。この二面性こそ、全国配信のポッドキャストにも、SNS広告にもない、コミュニティFMだけの存在意義です。広告主がFMおおつに広告を出すということは、単に「聴かれる」だけでなく、この地域の安心を支える仕組みの一部になる、ということでもあります。5. 消えない広告、育つ広告
折込チラシは翌日には捨てられ、SNS広告はスクロールで消え、展示会は当日限り。それに対してラジオ番組は、放送後も「shelfs」の聴き逃し配信やPodcastとして残り続け、新しい出会いを生み続けます。 しかしそれ以上に大切なのは、ラジオが時間とともに育つ広告だということです。1回で終わる広告は、消費されて終わり。しかし毎週語りかける声は、聴くたびに信頼が積み重なり、気づけば「あの人」「あの番組」として地域の記憶に刻まれていく。これは即効性のある広告には絶対に持てない資産です。 古田 誠が「GIVERS GAIN®︎」の思想でBNIを語るように、ラジオもまた、与え続けることでしか得られない信頼を運ぶメディアです。すぐに数字にならなくても、声は必ず誰かの記憶に残る。それがラジオ広告の、いちばん静かで、いちばん強い力だと考えています。出典
- 音声広告の驚くべき効果:マーケティングとブランディングのトレンド(文化放送メディアナビ)
- なぜ今ラジオCM?デジタル時代に「音の広告」が選ばれる理由(文化放送メディアナビ)
- Listen Up! Emotion’s Defining Role in Audio Advertising Effectiveness(Radiocentre × System1)
- What Gives Radio Its Edge in Driving Emotional Engagement(media.co.uk)
- Can Radio Solve The Loneliness Epidemic?(Radio Ink)
- When Crisis Strikes, Radio is the Lifeline People Trust(SoCast Digital)
- コミュニティFMラジオ放送の災害時における役割(総務省)
- 「防災セットにラジオ」は常識だけど、なぜ?(NewsCafe)
- 地域の課題とコミュニティ(MUSIC BIRD for Community FM)










